[記事翻訳] Japan, Home of the Cute and Inbred Dog

アメリカのパピーミルの問題は深刻です。多くの犬が人間の欲(利益)のために量産され、不要になった犬たちは、それこそ工業製品のように殺され、捨てられ、野良と化した犬達はさらに道端で子を産み、保健所やシェルターには行き場のない犬が溢れ、どこからも引き取り手が現れない犬たちは、殺処分室へと送られます。

10年ほど前、NYタイムズに、日本で売られる犬に遺伝子異常や奇形が多いという記事が掲載されました。その記事のことを、数日前にツイッターで紹介↓↓したら(誤字ごめん)、多くの方から反応がありました。

 

アメリカで起きているパピーミルの問題は、日本でも起きている—。

それをひとりでも多くのひとに知ってもらいたいという気持ちから、記事を全文訳しました。10年も前の古い記事ですが、この記事で語られた問題は、きっと、日本のどこかで、今も続いている。アメリカの10年前のパピーミル問題が、潰しても潰しても、あらたに湧いてくるのと同じように。

お願いです。軽い気持ちで、モノのつもりで、「命」を店頭で買わないで。

犬を飼いたくなったとき、生体販売のペットショップに向かう前に、どうかシェルターをのぞいてあげて。

どうしても特定犬種が欲しい方は、店頭ではなく、その犬種で定評あるブリーダーから直接入手してほしい。

以下は、2006年12月28日に、ニューヨークタイムズに掲載された記事の翻訳です。(翻訳文中に挿入された写真は原文記事に掲載されているのと同じ写真です。)

原文はこちら:Japan, Home of the Cute and Inbred Dog

日本は愛らしい近親交配された犬の国

2006年12月27日 東京

DogInbred.jpg

青っぽい毛色をしたチワワが欲しくはないですか?

それとも、ハンドバッグに入ってしまうぐらい小さなティーカッププードルはいかがでしょう?盆栽のワンコ版とでもいいましょうか。

日本人は、そんな犬たちが大好き。

ここでは希少な犬を愛でるひとたちがいて、100万円といった驚くほど高価な価格がついたりする。だが、そんな犬と一緒に産まれてきたきょうだい達に、ほんとうの問題が隠れている。遺伝子異常を抱え、四肢が欠けていたり、目や鼻がない子犬たちだ。

脳にひどい障害を持ち一日中ぐるぐると円を描いて走り続ける犬がいる。骨が弱すぎて体内で溶けてしまう犬もいる。獣医師やブリーダーらは、売られている多くの犬が何らかの病気を隠し持っていて何年か後にそれが発症することもあると言う。

ミヤウチ・キヨミさんは、そういう悲しい体験をすることになった飼い主のひとりだ。何年も前に買ったボストンテリア2頭のうちの一頭が、昨年ミヤウチさんの居間で突然倒れ、けいれんを起こして死んでしまった。3月には、その犬が産んだ子犬の一頭が同様の状態で突然亡くなり、もう一頭の子犬は目が見えなくなった。

ミヤウチさんの体験談はここでは実はしょっちゅう起こっている。だが、その問題に注意が向けられるようになってきたのは最近のことだ。無謀な近親交配のせいで、日本は遺伝子異常を抱える犬の割合が世界的にみても高く、異常発生率は米国や欧州の4倍もあったりする。

日本という国は、抱きしめたくなるキュートなものを社会的なステータスシンボルに変える傾向がある。日本でいま犬たちが抱えている病気も、そうした傾向が生んだ悲劇だ。しかし日本人には流行に飛びつくところもたぶんにあって、彼らは常になんらかの流行りに囚われているひとたちにも見える。

「日本人はなにかブームが起こると熱狂的になりやすいんです。」そう語るのは相模原市の麻布大学獣医学部で遺伝子異常が専門のカゲヤマ・トシアキ教授だ。「でも、犬は単なるステータス・シンボルじゃない、生き物なんだということを忘れている人がいる。」

日本では犬は流行の最中だ。さほど問題にはならないだろう流行りだと、たとえばピンク色の流行というのがある。ピンクのデジカメ、ピンクのポータブルゲーム機、そしてもちろん、ピンクのラップトップコンピューター、そういうグッズが若い女性の間では必須アイテム扱いだ。去年は‟虫王”というカブトムシを戦わせるコンピューターゲームが流行った。

日本発の大流行の中には、大平洋を越えてアメリカに渡りそこでも子供達を夢中にさせたものもある。コンピューターのスクリーン上で育てるバーチャルペットのたまごっちや、風変りなカートゥーン満載のポケモンがそのよい例だ。

神経を磨り減らすような教育システム下で、日本人は周囲と調和を保つよう教え込まれる。日本人の流行りものへの愛着は、そうして叩きこまれる集団を重んじるカルチャーの反映かもしれない。しかし、一大ブームが巻き起こる現場には、ビッグ・ビジネスの影もみえる。ソニーや任天堂といった企業は、可愛らしくて新しいキャラクターやデバイスを次々に生み出して、人々に愛される次のヒット商品を創り出すのに忙しい。群れで動く日本の消費者心理に便乗し、ソフトウェア開発者からマーケッター、そしてディストリビューターまで、複雑な産業構造全体を維持してゆくのに、そうした大流行が貢献しているのは間違いない。

それと同じことが、急成長で現在年商100億ドル(1兆円)規模とも言われている日本のペット産業にも起きている。現在は、某金融会社のテレビコマーシャルに登場したチワワが犬種としては大人気だ。1990年代初め頃は、シベリアン・ハスキーが出演するテレビドラマが話題になり、それまで日本では数百頭しか売れてなかったシベリアン・ハスキーが、ブームに乗って一挙に6万頭売れた。しかし、日本ケンネルクラブの話では、その流行が去るや、シベリアン・ハスキーの売り上げはガタ落ちになったという。日本の小ぶりな住宅事情にはそぐわない大型犬だったにも関わらず、シベリアン・ハスキーに人々は熱狂したのだ。

合衆国でも特定犬種の売り上げが急増することはある。米国では人気犬種を量産する‟パピー・ミル(子犬工場)”の問題に悩み、対抗措置として、病気を抱えた動物の販売を禁ずる法律がいくつもの州で施行された。

しかし、ある犬種が人気になると、その売上げ急増の仕方が日本ではとりわけ極端と統計が語っている。ケンネルクラブによれば、倫理観に欠け大流行に便乗して儲けることしか考えず、僅かの数の親犬から大量の子犬を量産するブリーダーが存在するという。日本には健康管理の行き届いた環境を心がけるブリーダーが大勢いるが、中には金儲け優先で犬の状態に注意を払う気などない繁殖業者も一部でまかりとおり、パピーミル乱立に至っているというのだ。

さらに、日本の犬繁殖業界にそうした危険な近親交配がはびこるもうひとつの隠れた理由に、日本の出生率の低下を挙げる獣医師や専門家もいる。

子供を持たない女性やカップルの数が増加するに従い飼い犬の数も増えていて、彼らは子供の替わりに犬を可愛がり甘やかしている、と専門家は指摘する。ペット業界誌の発行元ヤセイ社の社長ハラダ・タカシさんによれば、日本でペットとして飼われている犬の数はこの10年間で倍増し、昨年時点で飼われていた犬の数1300万頭、これは12歳以下の子供の数を上回る数字だという。

ハラダさんは「子どもの数が少ない、あるいは全くいない家庭が、その空白を埋めるために犬に向かっているのです。」と言う。「家族の一員として迎える犬なのだから、人間のように、ユニークで特徴のある犬がいい、そう考える人がいる。」

実際、そうした飼い主の多くが、子供を誇る親のようなつもりで、他人にみせびらかすことができる犬を欲しがる。特別な犬を手に入れるために彼らは高額を支払うのを厭わないし、珍しい犬であればあるほど高値が付く。特徴として毛色が青みがかっている犬を欲しがる買い手が多いが、それは劣性遺伝子が持つ特徴であり、やはり他の劣性遺伝子と掛け合わせることでのみ生み出すことができるのだという。

劣性遺伝子の掛け合わせには、近親交配が手っ取り早い。その特徴を受け継ぐ子犬を代々産ませるために、その劣勢遺伝子を持つ犬は、自分が産んだ子犬と繰り返し交配させられる。

近親交配でも、注意深く手順を踏めば安全な場合も実際ある。しかし、日本では、細心の注意を払うどころか、利益の前にはそんな注意はお構いなしの繁殖業者が多すぎる、と専門家たちは言う。たとえば、青みがかった毛色をした子犬を一頭生み出すごとに、奇形を伴う犬が何頭も一緒に生まれてくるという。奇形も、劣性遺伝子を掛け合わせた結果なのだ。

「需要が非常に強いので、繁殖業者のほうもその需要に便乗しようという誘惑にかられる。」そう述べるのは、チワワのブリーダーとして日本でトップと定評があるカワナベ・ヒデカズさんだ。「手早く金儲けをすることしか考えていない、犬を工業製品かなにかだと思っている、そういう悪徳ブリーダーが一杯いるんです。」

問題が認識されてから日が浅いため、ラブラドール・レトリーバーの腰骨奇形に関する遺伝子異常の総合調査も日本ではつい2年前に出されてきたばかりだ。その調査結果によると、ラブラドールの半分近くに腰骨の形状異常が発生していた。同調査を手掛けた麻布大学のカゲヤマ教授によると、この結果は米国の4倍にあたる数値なのだという。

広島市でペットストアを営むササキ・ヒロフミさんは異常を持った犬が多すぎることにこころを傷め、昨年古いバーを改築し、異常を抱えた犬達が余生を過ごせるホスピスを作った。これまで彼が引き取った犬は32頭いるが、生き残っているのは12頭しかいない。

dog hospice.jpg

ササキさんの犬ホスピスに、ケイカと名付けられた1歳の雌のダックスフントがいる。耳が聞こえず、目は絶え間なくあちこち彷徨う。この犬のブリーダーは当初、ダックスフントとしては珍しく身体の半分が白いということで、この子を7500ドル(75万円)で売ろうとした。

「人間の自然な肌色が青ではないように、白い身体のダックスフントも自然の色ではないんですよ。」とササキさんは言った。

そのブリーダーはササキさんに、ケイカを創り出すために子孫を3代掛け合わせたと言ったそうだ。つまり人間でいうと、まず娘と交配させ、生まれてきた孫と交配させ、そこで生まれてきた曾孫とさらに交配させたら、ケイカができた。しかしケイカと一緒に産まれたほかの4頭の子犬はいずれもひどい奇形だったため、生後すぐに処分された。

先に登場したボストンテリアの飼い主で神戸在住のミヤウチさんは、犬の近親交配が日本で広く一般に行われていることを知り愕然とした。彼女の2頭目のボストンテリアが亡くなった時、ミヤウチさんはブリーダーに連絡を取ろうとしたが、ペットショップから渡された電話番号は使われていない番号だった。

「誰もこの業界を監視していないのです。」とミヤウチさんは言った。

日本政府は監督が行き届いていないことを認めており、この6月に遺伝子異常が認められる犬を繁殖に用いる業者からブリーダー免許を剥奪する法律を作った。しかしペット業界の管轄である環境省には、全国に2万5千あるペットショップや、犬舎、ブリーダーをモニターして取り締まる人員が4人しかいない。

日本ケンネルクラブでは、この4月から、血統書上にDNAスクリーニングテストの結果を記載し始めた。しかしそれも、危険な近親交配を防ぐため犬種ごとに認可される体色を徹底させているアメリカン・ケンネルクラブの規則には及ばない。

日本ケンネルクラブ会長のナガムラ・タケミさんは、「犬の遺伝子異常への対策では、日本はかるく30~40年は遅れているんですよ。」と言う。

動物ケアに関わるプロ達は、究極的な解決にはブリーダーだけではなく将来犬の飼い主になるかもしれない側も教育する必要があると口をそろえる。

日本動物愛護協会で獣医を勤めるヤマグチ・チズコさんはこう言う。「もし消費者の側が、不自然な姿をした犬を買いたがるのをやめれば、ブリーダーも危ない繁殖を止めるようになるのです。」

(記事終)

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