Inner Wolf : 内なるオオカミ

以前からイエローストーン国立公園のオオカミ復興プロジェクトについては耳にしてはいたが、先日、『American Wolf』という本に触れ、改めて、オオカミに強い興味を惹かれるようになった。

2017年に米国で出版され、ほうぼうで注目を集めたこの本の主人公は「O-six(オーシックス)」と呼ばれたメスのオオカミ(写真)。イエローストーン国立公園内の数ある狼のパック(群れ)の中でもひときわ人気を博した群れのリーダーだった。

 

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O-six

 

野生のオオカミのパック・リーダーはオスがなると思われがちだが、実はメスもリーダーになる。この本は、メスのリーダーO-sixの逸話を柱として、野生のオオカミの生態を語り、絶滅しかかったアメリカのオオカミの保護に取り組むひとびと、保護に反対するひとびと、さらには、賛成派と反対派の綱引きに多大な影響を与える環境保護規制や米政界ポリティクスにも言及し、オオカミを取り巻く話題をさまざまな視点から網羅したノンフィクションだ。

 

本書を読み進むうちに、パック・リーダーの行動に見られる「リーダーとしての資質」に、わたしは強い興味をひかれた。オオカミには、人間のように、「empathy」があるというのだ。

 

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Free Willyと最後のシャチの赤ちゃん

ハリウッド映画『Free Willy』は、水族館に囚われの身でいたシャチのウィリーと心を通わせ合った少年が、ウィリーを自然の大海に戻そうと奮闘する物語。
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この映画でウィリーの役をやったシャチは、実際はKeikoという名で、ノルウェー沖で捕獲されたあと22年間も水族館の水槽で過ごし、水族館を訪れる客たちに曲芸を披露するスターだった。

映画『Free Willy』の大成功により、Keikoも(映画のように)自然の大海の仲間のところに戻してあげたいという愛護運動がアメリカで巻き起こる。資金も集まり、「Keiko自然復帰プロジェクト」が現実に稼働を始めた。

しかし、ハリウッド映画の作り話のように話が進むはずもなく、結局、Keikoを自然界に返すため総額$20ミリオン(20億円以上)をかけたものの、Keikoは人間のそばを離れることができず、人間と交流したがり、最期は体が弱って、数年後に北欧の村の海辺で村人たちに見守られながら息を引き取った。

人間の人間による人間のための「シャチ愛護プロジェクト」はこうして失敗に終わった。2003年のこと。Read More »